ネガティブ・ケイパビリティーキーツが伝えたかったこと
- Megumi Karasawa
- 5月1日
- 読了時間: 3分
誤解してました
以前ネガティブ・ケイパビリティ/Negative capabilityについて記事を書いた
この言葉を知ったのは現在放映中のテレビドラマ「しあわせは食べて寝て待て」で使われていたからだ
聞いた途端ハッとして、じんわり共感した
ネットで調べたら「解決策を急がないで、状況をじっくりと観察し、深い理解を深める力」
という意味だという
元を辿ると十九世紀のイギリスの詩人ジョン・キーツ(John Keats、1795年 - 1821年)が書簡集の中で不確実なものや未解決のものを受容する能力を記述した言葉※1
その後、精神科医ウィルフレッド・ビオン(Wilfred Ruprecht Bion、1897 - 1979)が再発見し
心理学や医療現場で取り入れられるようになった
現在では、対人関係における共感や教育、医療、介護など様々な場面で重要視されている※2
偶然、今読んでいる本※2でジョン・キーツの詩と共に
ネガティブ・ケイパビリティについて書かれた章を見つけた
偶然の出会いに驚き、食い入るように読んで知ったことは
わたしが最初に記事にしたとき、この言葉を誤解していたことだった
この本には、現在使われている意味の元になることが書かれている
ネガティブ・ケイパビリティはジョン・キーツが弟に宛てた書簡の中に出てくる
本来は
「芸術を理解する能力」
という意味で使われていた
現在では意味を広げて、相対するもの、決して解決できない論争や対立や紛争を乗り越える可能性をネガティブ・ケイパビリティに見出す。という解釈になっている
キーツの考えるネガティブとは不在・消極的・負を意味するが
ポジティブ(前向き・明るさ)に対するものでないことを理解したい
ネガティブ・ケイパビリティをキーツに則って理解すると
現在や現世、現実という世界から疎外された場所
隔たった場所
排除されたすべての存在に開かれた場所、不可能性を受け入れる能力という
理性や事実だけではない、不確実性や疑いや未知の状態に留まっていられる能力を指す
現代を生き抜くためのツールとして認識していたが
キーツに遡り、キーツの文脈で考えるなら
芸術を理解する能力。
と受け止めたい
不確実で未知の状態を受け入れて、そこに留まる能力は、不在の場所に〈たましい〉を共振させる
不在の場所で、疎外された場所で、不可能性をを認めることによって他者との共感が始まるのだ
(と、書いていても、なんだか呑み込めずにいて、文章が曖昧になる)
不確実で神秘的な未知のものを芸術と置き換えて
日常生活の些細な瞬間にも芸術を見出し
不在の場所を経験することなのかもれない
ネガティブ・ケイパビリティをキーツの詩と書簡から紐解いてくれた書籍は
岡崎乾二郎氏の『感覚のエデン 岡崎乾二郎批評選集vol.1』である
氏は現在、東京都現代美術館で展覧会「而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」を開催している
展覧会を鑑賞する前に著作を読んでおこうとおもった
まさか、ネガティブ・ケイパビリティに出会うとは思わなかった
セレンディピティが発動したようだ
こういう偶然を引き寄せるときは、なにかいい予感がするものだ
今日もおつかれさまでした
明日も安全な一日になりますように
※1,2 ネガティブ・ケイパビリティ Wikipediaより
※3 岡崎乾二郎『感覚のエデン 岡崎乾二郎批評選集vol.1』亜紀書房, 2021
Comments