美術館に出掛ける#1 オディロン・ルドン
- Megumi Karasawa
- 5月7日
- 読了時間: 5分
更新日:5月8日
パナソニック汐留美術館「オディロン・ルドンー光の夢、影の輝き」展
パナソニック汐留美術館で開催中の「オディロン・ルドンー光の夢、影の輝き」展に行ってきた
ルドンの作品を本格的に知ったのは銅版画を始めてからだった
中学の美術の授業でみた、大きな目玉のある作品『キュクロプス|The Cyclops』(1914年頃,クレラー・ミュラー美術館)が印象に残っている
中学生の頃、代表的な作品一点のみで作風を決めつけ
その空想的なイメージに馴染なかった
まだ黒の時代の作品は知らずにいた
大学を出て何年かして銅板画を習いに工房へ通った時期がある
約二年間、一通り技法を学んだ後で自分のペースで制作を続けた
版画工房の主は駒井哲郎氏に師事していた人で、工房にはルドンの画集やレプリカが飾ってあった
駒井哲郎氏はルドンに深く影響を受けた人である
銅板画のもつ独特の黒色と幻想的で物語性の強い世界をみたら
始めたばかりの銅板画のその魅力のほとんどすべてを与えられたような気がした
奇怪な登場人物、生命体が現れる作品
版画でしか顕せない光や影や気配に一目で吸い込まれた
実際に作品を観る機会を持てずに今に至っている
今回ようやく作品を観ることができた
実は二〇〇〇年代だけでも八つの展覧会が開催されていた
・二〇〇一年、群馬県立美術館、他『オディロン・ルドンー夢の神秘と世界へー』
・二〇〇二年、島根県立美術館、他『ルドン展ー絶対の探求ー』
・二〇〇四年、茨木県立近代美術館『世紀末が見た夢ールドンとその周辺ー』
・二〇一一年、浜松市美術館、他『岐阜県美術館所蔵 ルドンとその周辺ー夢見る世紀末』
・二〇一三年、損保ジャパン東郷青児美術館、他『オディロン・ルドンー夢の起源ー』
・二〇一八年、ポーラ美術館『ルドン 開かれた夢ー幻想の世紀末から現代へ』
・二〇一八年、三菱一号館美術館『ルドンー秘密の花園』
・二〇二〇年、三菱一号館美術館、他『1894Visions ルドン、ロートレック展』
タイミング
今、観ることができたから?こんなに感銘を受けたとおもう
感動を伝えたくて友人にも勧め、再度観に行ったのだった
オディロン・ルドン(Odilon Redon、1840 - 1916)
フランス・ボルドー生まれの画家
十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて活躍する
幻想的で空想上のモチーフと目に見えないものを描き、写実主義や印象派と相対する作風が特徴
キャリアの後半はナビ派との交流や装飾的な絵画を取り入れながら色彩による新たな画風を展開する
これまでの文学的な要素からより理解しやすい主題に移り
肖像画、花の絵、神話画、 装飾画などを手がけ世界的な名声を獲得した
同生まれにクロード・モネ(Claude Monet, 1840 - 1926)
オーギュスト・ロダン(François-Auguste-René Rodin、1840年 - 1917年)がいる
特にモネとは直接的な関係を築くことはなかったが
新しい視覚や造形性を別のベクトルで求めながら並走した画家だった
黒色から色彩へ
活動初期の一八七〇年から八〇年にかけて黒の世界を追求し
銅版画(エッチング)や石版画(リトグラフ)、木炭画を手掛け版画集を出版した
作品は同時代のポーやユイスマン、マラルメやランボーに影響を与える
ルドンの黒の使用のひとつに版画が一般的に広く流通した背景がある
十九世紀半ばフランスで簡便で価格の安い版画が流行したのだ
黒い色は都会的で、精神性やロマンティシスムも表わす色だった
一八九〇年代から後半生は色彩を用い新たな画風を展開した
十七世紀に発明されたパステルを木炭と併用しながら独自の作風を模索する
文学との関連や文学的な芸術との評価を受けたが、後にそう定義付けられることを厭うようになった
背景には色彩による新たな作品の飛躍を模索していたからかも知れない
文学だけに偏らない芸術を目指していたようにおもう
♦参考文献
展覧会図録「PARALLEL MODE オディロン・ルドン 光りの夢、影の輝き」,二〇二四
2025年4月12日(土)~ 2025年6月22日(日)
パナソニック汐留美術館
開館時間10:00ー18:00
観覧料:一般1,200円

「美術館に出掛ける」を読んでくれてありがとうございます
ルドン展が素晴らしかったので、記事は次回も続きます
平日の午前中と祝日の午後と
どちらもほとんど差がない程、多くの人が訪れていた
それが嬉しい
会場はこじんまりとして丁度いいサイズ
そこに約百点の作品がぎっしり詰まっている
デッサン、木炭画、版画、水彩、パステル画、油彩に屏風
ジャンルも多彩に構成し見応えがある
照明も暗く作品が引き立つ、場の雰囲気があり品がいい
花の作品を集めたブースは特に高貴で品格があった
国内外から集結した作品の九割近くは岐阜県立美術館から貸し出されたものだった
岐阜美術館は世界的な質と量を誇るルドンコレクションを誇る、と知った
一九八二年の開館以来約四十年間、二五〇点超のルドン作品を所蔵している
岐阜には行ったことがない
ルドンを観に出掛けてみるのも面白い旅になりそうだと夢が膨らむ
いずれ叶えたい
今日もおつかれさまでした
明日も安全な一日になりますように
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