美術館に出掛ける#2 ルドンの赤
- Megumi Karasawa
- 5月8日
- 読了時間: 4分
更新日:5月8日
パナソニック汐留美術館「オディロン・ルドンー光の夢、影の輝き」展
パナソニック汐留美術館で開催中の「オディロン・ルドンー光の夢、影の輝き」展に行ってきた
銅板画工房に通い自分の作品を作りながら
版画でしか顕せない世界や黒色の独特の奥深さを実感するようになった
工房で見たオディロン・ルドンの版画作品集はどれも圧倒的な存在感を放っていた
幻想的で物語性の強い作品世界は現実感があり、現実にはない世界の出来事だった
今回パナソニック汐留美術館に出展されている版画作品は
ルドンの画集には必ず掲載されているものばかりで、有名なものはほぼ揃っている
ルドンの「黒の時代」と言われる時期は大体一八六五年から一八九〇年と言われている
二十五歳から五十歳頃まで
それ以降ゆるやかに色彩の仕事に移行するのだが、図録中に興味深い引用を見つけた
「黒は最も本質的な色だ。(略)黒の最高の美は、人の一生の中心の部分、長いか短いかのちがいはあっても、中心をなす期間にあらわれる」オディロン・ルドン著小沢一郎訳『私自身に』p.p156-157『PARALLEL MODE:オディロン・ルドンー光の夢、影の輝き』図録2024,p10
人は一度深く底に潜るように、黒の世界に潜水する
黒による絶対的な探求
人の一生のある時期に必ず潜る海がある
そんなことを言っているような気がする
赤い色
会場で観た色彩の作品
眼に飛び込んでくる象徴的な色があった
赤
黒の時代からのモチーフ神殿と巫女が描かれた《神秘的な対話》(1896頃、油彩/画布、岐阜県美術館)
では人物が赤い小枝を手にしている
ルドンの絵画では赤い樹や枝は何らかのシンボリックな役割を担うモチーフである
赤に注目すると作品のほとんどに使われている
その面積は広く、赤一色の作品もある
さらによく見ると
支持体の地の部分を塗り残した部分やあえて見せたりしてる部分がある
これらは絵全体を効果的にしている
ルドンが今現在に描いているにも関わらず
経年劣化のような色彩の剥奪や色彩の不透明さを感じるのだ
とても古い時代の作品のように見えてくる
作品が永続的であり、後世に残されたものであるかのような
発掘された古代の遺跡としての絵画であるような
イコン…
そんな印象を受けた
ルドンの赤い色とレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci 1452 - 1519)
の赤チョークとの関連を見出していた
経年劣化や色彩の剥奪、色トビや塗り残し
赤い色でデッサンした線をそのまま残した作品《捕虜》パステル/紙,ひろしま美術館
が引き金になりレオナルドの素描を思い出さずにはいられなかった
だからだろう
十五世紀から十六世紀後半に描かれたような
或いはそれ以前に描かれたような錯覚があったのだ
赤チョークの素描
レオナルドが素描に赤いチョークを使った理由として
個人的な好みが強く、赤チョークの使用は彼の個性を表現する要素の一つだったかもしれないこと
実用的な要素として、下書きの視認性向上、 修正や変更の容易さ、メモの整理が挙げられている※1
>レオナルドとルドンについては次回に続きます
♦参考文献
展覧会図録「PARALLEL MODE オディロン・ルドン 光りの夢、影の輝き」,二〇二四
2025年4月12日(土)~ 2025年6月22日(日)
パナソニック汐留美術館
開館時間10:00ー18:00
観覧料:一般1,200円

「美術館に出掛ける」を読んでくれてありがとうございます
ルドン展が素晴らしかったので、記事は次回も続きます
時間切れになったのでルドンとレオナルド・ダヴィンチの続きは次回へ
他にルドンの光について書く予定です
中途半端になってしまいましたが、読んでくれてありがとうございます
今日もおつかれさまでした
明日も安全な一日になりますように
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