以前のキャンバスに新たな「まなざし」を加える
- Megumi Karasawa
- 8月12日
- 読了時間: 3分
個展の開催まであと2ヶ月。気持ちの振り幅に悩むこともありますが、そればかり言っていても始まりません。今日は、アトリエから、現在進行中の作品について少しお話ししたいと思います。
再び、キャンバスと向き合う
今回の個展では、以前のブログでも触れたように、墨と鉛筆によるドローイングが重要な役割を担います。しかし、それだけではありません。過去に描いたキャンバス作品に、今一度向き合い、新たな加筆を加えています。
今日、皆さんにお見せしたいのは、数ヶ月前に描いたキャンバス作品です(写真をご覧ください)
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2025 | 2025 | 2025 |
グアッシュ/カンヴァス | グアッシュ/カンヴァス | グアッシュ/カンヴァス |
22.7×15.8cm | 22.7×15.8cm | 22.7×15.8cm |
当時はこの表現で完成としていましたが、今の私には、この作品の副題となった「消失や無音、回帰」というテーマを、色の厚み(マチエール)でさらに掘り下げられる可能性が見えています。
特に、以前は薄塗りで仕上げていた箇所に、もう一度色を重ね、引っ掻いたりぼかしたりしながら手を加えています。
そうすることで、画面から『声』や『存在』をかき消すかのような消失の痕跡や、深く静まり返った無音の時間を描き出そうとしています。そして、その上に再び色を重ねる行為そのものが、自己を満たす雑多なお喋りを消失させ、静かな無音の時間を求め、仕事へと回帰することを意味しているかのようです。
「差異」が生まれる瞬間
この加筆のプロセスは、まさに「まなざしと差異」というテーマを体現しています。過去の私のまなざし(元の作品)と、現在の私のまなざし(加筆)がキャンバスの上で交錯することで、時間軸を超えた「差異」が生まれるのです。
過去の私と現在の私が一つのキャンバスの上で交錯することで、作品はただの絵画ではなく、過去と現在が混在する時間的な空間になります。この加筆のプロセスは、作品に特有の空気感を生み出し、観る人それぞれのまなざしによって、新しい物語を紡ぎだすことを期待しています。
加筆することで、作品は常に変化し、進化し続けます。
完成形を決めつけず、作品が持つ可能性にできるだけ食らいつく。
このプロセスこそが、私にとっての忍耐と我慢を経た後の光景なのです。
個展への道筋
現在、この加筆作業はまさに進行中です。
7月にグループ展に出品した24枚の作品のうちの3枚を、今回は単独作品として新たに作り上げる予定です。グループ展では『24枚の中の3枚』という文脈で鑑賞されていたこれらの作品が、今回の個展では、それぞれが独立した世界を持つ単独作品として、新たな文脈の中で語られます。
それぞれの作品が持つ物語がより際立ち、一枚のキャンバスの上で、時間や思考、筆や絵具の重なり合いが、今回の『まなざしと差異』展を構成する重要な要素となります。
個展では、この作品をぜひ至近距離から鑑賞していただけると幸いです。
作品がどんな表情を見せてくれるのか、私自身も作品から集中を切らさないように仕事をしていきます。
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