アトリエがなくても、言葉が見つかるまで:私はアートによって存在する
- Megumi Karasawa
- 6月25日
- 読了時間: 5分
アトリエを持たないこと、そして言葉で表現することの難しさ。これらは、アーティストとしての私が長年向き合ってきた、根深い課題でした。しかし、これらの課題こそが、私自身の『自分の道を歩く』という覚悟を常に問い続け、そして『アートによって存在する』という境地へと私を導いてきました。今日、皆さんに共有したいのは、そんな私の根深い『メンタルブロック』と、いかにしてそれに立ち向かい、『自分』と向き合ってきたか、という軌跡です。
私のメンタルブロックの根源:アトリエがない劣等感と人間関係への恐怖
何を隠そう、私はアトリエを持っていません。アーティストであればアトリエくらい持っていないと箔がつかない、と内心思うことも度々あり、物理的な制約が、私のメンタルブロックを強化したのは確かでした。例えば、海外のアートサイトから作品掲載のオファーをいただく際、『アトリエで作業している写真』を求められることがありました。その度に、自宅の一角で細々と制作する自分の現実と、『プロのアーティストは立派なアトリエを持つべきだ』という漠然とした理想とのギャップに、胸が締め付けられるような劣等感を抱いていました。これは単なる物理的なスペースの問題ではなく、私自身のアーティストとしての『格』や『覚悟』が足りないのではないか、という根深い自己否定へと繋がっていたのです。
なぜSNSで作品を頻繁に投稿していたのか。その理由は、表向きは『作品を見てほしい』という純粋な気持ちでしたが、ある時、深く自己分析をした結果、かねてから薄々感じていた、しかし目を背けていた真実に気づきました。それは、目に見えるリアルな場で行う人間関係のコミュニケーションに対して、極度の恐怖を抱いていたからでした。
実際、FBで作品を頻繁に投稿していたとき、海外の方々の眼に留まることもあり、アートサイトやオンラインギャラリーの関係者から掲載したいというメッセージをもらうことが何回かありました。その時に作品の紹介やアーティストステートメントなどが求められましたが、私は対面での人間関係の構築や、大勢の前で自分を表現することから逃れるように、オンラインでの発信に傾倒していたのです。
アーティストとして経験が浅くアトリエも持っていない、受賞歴も肩書もない…という職業的なコンプレックスに加え、個人的に抱く他者への深い不信感。「裏切られるのではないか、相手を困らせてしまうのではないか、嫌われるのではないか、怒られるのではないか…」というネガティブな感情が常に先行し、大勢の人のいる場所や初対面の人と関わる場は特に苦手でした。
これは、単なる「苦手」ではなく、「作品露出」だけでなく「自分自身をアピール」することへの根深い恐怖症です。身体的、精神的に強い苦痛を伴うレベルだったのだと思います。
(以前の記事「時間の、音読」で書いた)友人との比較をしてしまい、自己卑下や恐怖を膨らませてしまうこともありました。アーティストとしての大胆さやアグレッシブさ、行動のスピード感のなさ、自分の気の弱さが、自己否定へと繋がっていたのです。
今書いたことが、私がメンタルブロックとして長年付き合ってきた生々しい感情であり、今も継続して抱えている厄介なものです。
変化の兆しと、敏感な私の特性
同時に、最近ではバドミントンサークルに入ったり、交流する知人の輪が広がったりと、良い変化も生まれています。
私のメンタルブロックは、外部環境や新しい変化にとても弱いということ、そして必要以上に恐怖と不安に駆られてしまうことにあるのだと理解しています。だからか、人よりもそのセンサーは敏感で、人間関係ではかなり人を警戒しています。打たれ弱く、些細な言葉に引っかかり、数日間も気に留めて悩むこともあります。ですが、そうは見せないように強がっているために、他者からは落ち着いているとか強いようなイメージを持たれることも少なくありません。
私の作品が宿す「孤独」と、表現のアプローチ
来月に控えた展覧会で、私は自分の特性を深く考えて、作品の見せ方を徹底的にこだわりました。私には作品に対する話したいことがたくさんあります。それを一人一人に向けて直接話すと疲弊してしまうため、テキストにまとめて見てもらうという方法を取り、キャプションにも一言添えています。
私の作品は、一般的なインテリアや生活空間に馴染むものではないと自覚しています。個人的な経験を経て生まれた作品のその根源にあるものは、「孤独」や「分かち合えなさ」です。もしかしたら、私の作品はディストピア的な世界観を持っているのかもしれません。だからこそ、一般的なインテリアにはそぐわないのだと。
時流に沿った模範的なアプローチや、表面的なアドバイスを鵜呑みにして作品の方向性を見誤り、台無しにしてしまうこともあると知れば、安易に流されず、自分の作品の良さや、私ならではのアプローチを模索しなければなりません。内発的なアイデアだけでなく、外部からの刺激によって、内発的なアイデアだけでなく、外部からの刺激によって、作品のあるべきアプローチ、本来の良さを引き出すことも目指しています。

今回の展覧会は、まさに私が自身の特性と深く向き合い、作品本来の魅力を最大限に引き出すための、大切な試練であり、新たな挑戦の場となると確信しています。 この場所で、私の作品、そしてその根底にある挑戦の軌跡を、ぜひご自身の目で感じ取っていただければ幸いです。皆さまとの出会いを心より楽しみにしています。
【展示会詳細】
イベント名: 第9回 菜々燦会展
会期: 2025年7月15日(火) - 20日(日)
時間: 10:00 - 17:00 (初日13:00から、最終日16:00まで)
会場: 柏壁市民センター2Fギャラリー(旧春日部市中央公民館)
入場料: 無料
参加作家: 石村 空也、唐澤恵、北村Q斉、高橋広、松本勝司
特別イベント「似顔絵作成いたします!」: 7月15日(火)~20日(日)の10時~15時まで
作家:高橋広(※17日(木)は高橋広氏がお休み)、唐澤恵(※全日在廊予定です)
料金:一枚二千円(唐澤作品)
会場アクセス:
〒343-0061 春日部市柏壁6918番地1
東武アーバンパークライン八木崎駅下車徒歩2分
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