芸術家と食生活
以前書いた記事の中でよく読まれている記事があります
それは「芸術家と食生活」について(→こちらを参照「芸術家と食生活」)
これは職業に関係なく幅広い職業の方々に共通する内容だと思います
どんな食べものを選んで食べているかによって仕事内容や表現するものに影響があるのではなかろうか、変化するのではなないかと疑問を抱いたことがきっかけです
食事が最重要である職業で一番初めに思いあたるのはスポーツ選手に代表されるアスリートの方々
パフォーマンスに著しい影響をもたらす栄養バランスや食事法は栄養士や専属の料理人が付いているという話しは聞いたことがありますし何より選手本人が徹底して食事管理しているのは周知の事実でしょう
しかしスポーツ選手に限らず普段の生活で食事を疎かにせずにいることはもっと大切にしていいことなはず…仕事や身体、メンタル、生きることに直結するおおもとである食
食事を見直すと奥深くて知らずにはいられない世界が広がっていたのでした
スペイン・カタルーニャ出身の芸術家について以前書いた記事で「ミケル・バルサロー(Miquel Barceló Artigues 1957.1.8-)」という芸術家に興味を持ちました
彼について書かれた本を読みながら印象に残った箇所があります
それは「豚の燔祭」について
家族行事として豚一匹を殺し肉だけでなく骨や血、皮まで余すことなく全てを食べ活かすことを年に一度行っているということが書いた箇所でした※1
わたしは1年前に心身を崩して以来食事や生活習慣に気を付けてきました
体調が良くなるにつれだんだんと以前の生活に戻り、ゆるグルテンフリーを実践しています
小麦を含む主食以外(パン、パスタ、うどん、蕎麦)は口にするようになりカフェインも摂るようになりました
しかし幼少期から肉を食べることが苦手で、肉が好きではありませんでした
「出されたものは何でも食べる」
という家庭の方針はあったけれど肉だけはどんな小さな塊も見逃さず取り除く…家庭で、親戚での食事で給食で旅行先で、食事するときはいつも残していました
大人になって肉を克服し食べられるようになったのですが、ここにきて肉を食べることにまた向き合うことになったのでした
前述した世界的に活躍する現代アーティストは生きることと仕事(有償、無償含めて)がイコールで身体を動かし大小さまざまな仕事を続けるために動植物から頂いた生命/エネルギーを取り入れ、創造によって新しいくこの世界にエネルギーを吹き込んでいるようでした
大きな仕事、スケールの拡がり、大多数の人を感動させる人は食べるもの、口に入れるものがその芸術に多大な影響を及ぼしている…のではないか
つまり動物肉が芸術活動を支えているのではないかということだった
豚一匹、その血も無駄にせずに食する力強さやバイタリティが巨大な仕事を為すこととイコールになったのでした
自分を鑑みれば、少量の魚介類と多少の肉を食べているだけの食生活…それではいくら作品を作っても本質的に強靭な作品に届かないのではないかと失望したのだった
がしかし…
「ビーガン」という選択
自分の食べる食事について自覚的にならざるを得ないような時代
価値が多様化し主義や主張、情報が溢れている時代にどう生きて何を選択しますか?
「ビーガン」について知りたくなったのは、先月から金魚を飼い始めたことがきっかけです
家族が縁日で20匹ほどの金魚をもらってきたので、飼育スターターセットを揃え金魚の様子を見ながら水替え薬浴したりするものの毎日のように一匹、二匹と死んでいくのでした
ふらふらしながらやっとのことで泳ぎ、沈みを繰り返しやがて動きが止まる…
死んだ金魚の目は大きく見開きその小さな身から魂が抜けたのを確認するとふにゃふにゃになった柔らかい身を掬い取る、ちくりと胸が締め付けられる感触
このささいな出来事が魚の切り身、動物の肉を食べることに意識が向かっていったのでした
「ビーガン」…特に食事について動物性由来の食品を食べないという選択について知りたくなったわけです
ビーガンはベジタリアンの中のひとつで、他にも細かく分かれて9種類ほどあります
この考えを基に自分がしたい食事法や生活は何だろうと考えはじめたら今まで見えなかった世界を知ることになるのでした
野菜中心の食生活に切り替えて懸念されるのはまずタンパク質などの栄養不足になるのではないか?身体がもつか?ということでした…しかし料理本を見てみるとその食材や調理法やレパートリーは普段の食事とまったく変わらないように工夫して出来ていたのです
豊穣な食の世界が一気に開き、新しい文化・新たな知見に興奮と喜びがありました
まだまだ知識不足ですが、動物肉、魚介類、卵、乳製品、はちみつ、動物性由来のものを自分一人の食事では口にしないと歩み始めました
その背景には作品と自分の言動との矛盾を無くしたいこと
説得力のある作品や自分ゴトのように思う作品を作ることが目的としてあるからです
食生活から世の中に貢献できることに挑戦することが作品に説得力と強靭さをもたらすのであれば、強さとは力や搾取ではなく配慮や思いやり、愛情や意識を切り替えることもそのひとつになるのではないかと考えています
ちなみに日本のビーガン人口は2016年の時点で全体の2.7%、340万人いると推定されているそうです※2
「実践と実際」
さて芸術家と食事についてに話しを戻しましょう
描かれた絵の世界だけを観るのではなく作家の行動や生活全般が作品とどの程度リンクし合っているかも丁寧に見ていく必要があると気付いたいまわたし自身が何を食べてどんな意識を持って物事や世界と関わっているか、作品に反映しているかを問われているのだと自覚するのです
小さなことへの配慮
小さなものへの視点
小さな気付き
そのような愛情や思い遣りが必然である一方、自分の中にある小さな暴力や欲望、意地悪や嫌悪は見逃しがちになります
さらにわたしが殺生するのは動植物だけではない
他者との交友
感情の揺らぎ
言葉による刃
言葉に出さない刃
それらは気をつけていても、無くそうとしても、気づかれないようにしていても失われることはありません、その暴力や欲望や身勝手さも含めて人間なのだと囁く声が次第に大きくなるのです
暴力から目を逸らさず欲望からも目を逸らさない、ならあなたはどんな作品をつくりますか?
どんな作品を描きますか?
そう問うのはわたしであり、こたえるのもわたしだ
芸術家の食生活から見えてくる人間の欲望や暴力、愛情や気遣い、矛盾や無慈悲、理想や慈悲…それだけで芸術に参加する切符になるのです
作品は観る人によって装飾品になるか人生の道標になるかガラクタになるか分かれるだろう
作品に中途半端に関わることは中途半端に人生を生きていることに繋がる伏線に自分の行く末について改めて目を背けられないと胸がきゅっとなるのだった
参考文献
※1 小林康夫著.ミケル・バルセロの世界 形という生命/物質と暴力. 未來社, 2013, p67
※2 日本ヴィーガン協会慣習.ヴィーガンレストランガイド 東京.JTBパブリッシング,2021,p190
井上太一.今日からはじめるビーガン生活.亜紀書房,2023,175p
室田HAAS万央里.パリの菜食生活.青幻社,2022,180p
庄司いずみ.からだが整うゆるヴィーガン・レシピ,世界文化社,2022,111p
中島芙美枝.一汁一菜からはじめる 野菜でととのうヴィーガンレシピ,山と渓谷社,2023,94p
「芸術家と食生活#2」を読んでくれてありがとうございます
Blogの更新がすっかりご無沙汰してしまいました、週3回の更新を目指していたのですが早々にリタイアになってしまいました…楽しみにしている方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません😣
その間何をしていたかというと、今回の記事を踏まえて自分の作品テーマやモチーフが大きく変化を遂げるような気配があり、これまでの作品をリセットし新しいテーマに取り組み始めたところでした
これらの作品は10月11日から始まる個展には間に合わないので、次回に発表できる状態まで持っていけたらと考えています
また個展の告知が当初より遅れています、楽しみにして頂いている方々に詳細なアナウンスが出来ておらず申し訳ありません
夏の展覧会以降、無気力になり虚無感に苛まれていました
個展ではこれまで描いた展示をしていない作品と夏の展覧会に出品した作品で構成します
会期中はすべての日にちギャラリーに在廊しています
どうぞご来場頂けると幸いです、会場でお待ちしております
よろしくお願いします
個展開催のお知らせ
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■10月11日~10月20日
MegumiKaraswa個展
M-gallery 川口
住所:〒332-0016 埼玉県川口市幸町3丁目1−15-G
電話:048-254-8021
こちらも併せてご来場をお待ちしています☺
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