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『ロスト・ペインティング』探求録:展覧会初日、新たな対話の始まり

初日の様子
初日の様子

7月15日(火)、グループ展『第9回 菜々燦会展』が柏壁市民センター2Fギャラリーで開幕しました。この連載ブログも、いよいよ「現実」の作品と皆さんが対面する時を迎えました。

昨日の搬入作業を終え、会場全体を見渡して、これまでブログで深く掘り下げてきた私の思考と、実際の作品が空間に存在する感覚が結びつき、新たな想いが込み上げてきました。



空間と作品の対話:挑戦と手応えの展示


今回の会場は天井が高く、一人あたり横に10mを超える壁面が割り当てられているのが特徴です。この広大な空間をどう使うかという課題は、実は去年の展覧会を終えてからずっと意識していました。今年に入り作品を描き終え、5月(展覧会開始2ヶ月前)には具体的な展示構想を練り始めました。


小作品24点をただ並べるのではなく、キャプションと共に二つで一つの作品に見えるように一体化させ、上下左右にゆとりを持たせて展示するという工夫を凝らしました。これは、一つひとつの作品が持つ意味合いを尊重しつつ、それらが連なり、大きなキャンバス作品に匹敵するような群としての存在感を生み出すための試みです。


搬入し設営を終えて、どこか既視感を覚えたことは否めません。しかし、この既視感は、単なる気のせいではなく、もしかしたら過去の記憶や無意識下の経験が、現在の知覚と重なり合うことで生まれる現象なのかもしれません。それは、空間や作品が持つ普遍性、あるいは私たちの集合的無意識に触れる瞬間の表れとも言えるでしょう。当初の目標であった壁面空間の一体化はクリアできたと感じています。


作品と空間、そして配置構成との相性は、常に探求すべきテーマです。この広々としたギャラリーで、私の作品がどのような対話を空間と繰り広げ、鑑賞者の皆さんに語りかけるのか。その可能性を試すことができた初日となりました。



展覧会の「負荷」が次への原動力に


もちろん、今回の展示で課題が見えないわけではありません。やはり絵の内容やサイズ、技術面での表現力、素材の選定など、今後改善すべき多くのポイントがあると感じています。これらは、実際に会場に作品を展示しないと見えてこないことばかりです。


ここまで辿り着けたことへの安堵とともに、この「見えた課題」は、私を辿り着いた地点よりももっと先に進みたいと思わせる原動力になっています。作品が公の場に露出することで生まれるこの「いい負荷」こそが、アーティストとしての成長に欠かせないと改めて感じています。


さて、明日以降の会期中、この学びを活かし、鑑賞者の方の「動線」や「視線」をより意識してみたいと考えています。例えば、皆さんが作品のどの部分で足を止め、どのように移動しているかを観察し、「二つで一つの作品」としての見え方や、作品から立ち現れる「核」への気づきを促せるような、ささやかな工夫(立ち位置の意識やパンフレット配布など)を試みることで、皆さんの体験がさらに深まるかもしれません。

こうした実践と考察のサイクルこそが、私のアーティストとしての探求を深める糧となると確信しています。



初日を迎えて:感謝と今後の展望


初日は台風の影響が懸念されましたが、幸いにも多くの方々が会場に足を運んでくださいました。ご来場くださった皆様、心より感謝申し上げます。

二年連続でこのグループ展に参加する中で、制作のモチベーション維持や、内面的な葛藤に直面することも少なくありませんでした。しかし、こうして無事に初日を迎え、作品が実際に皆さんの目に触れる瞬間を迎えることができたことに、深い安堵と喜びを感じています。



会期と在廊のご案内


展覧会は7月15日(火)から20日(日)まで、柏壁市民センター2Fギャラリーにて開催中です。

私は会期中の平日午後から在廊しております。


・7月17日(木)13:00~

・7月18日(金)13:00~

・7月19日(土)10:00~17:00

・7月20日(日)10:00~16:30


今回の展示作品について、このブログでは「『ロスト・ペインティング』探求録」として、作品に込めた思いや、制作における葛藤、そして深い思考のプロセスを連載してきました。もしご興味があれば、ぜひ過去の記事もお読みいただけると嬉しいです。






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