作品にかける時間
- Megumi Karasawa
- 3月27日
- 読了時間: 4分
速描き、量産
とてつもない集中力で驚くほど速く描き上げる。 職業画家として立身するために重要なことである 。大量の注文が舞い込もうと仕事をこなすことができる、ということになるのだから。 原田マハ『たゆたえども沈まず』幻冬舎文庫,令和二年,p229
アート小説の名手といえば真っ先に思い浮かぶのは原田マハ氏であろう
フィンセント・ファン・ゴッホと弟のテオ、日本人画商の林忠正(実在した人物)を中心に十九世紀後半のパリの美術界を描いたアート・フィクション『たゆたえども沈まず』を面白く読んでいる
物語中に上記の文章に出会った
さてこれを読んでくださるあなたは
一枚の作品にどのくらい時間をかけますか
アーティストの制作時間は一般的な労働時間とは別次元の感覚で構成されている
精確に〇〇時間かければ完成という基準は存在せず一枚一枚がゼロからのスタート
目の前の一枚がどのくらいで描けるか、完成するかは作品次第なのである
だとしてもコンスタントに作品を作り続けるにはサイズと技法から大体の制作時間のベースは掴んでおきたい
画家の評伝や自伝を読んでいると一枚のタブローに数か月かけたとか、数か月放置してから手を加えたという記述にちょくちょく出会う
制作時間は厳密な就労時間に拘束されず完成を有限化しないと永延と仕事は終わらない、という感覚が育つことになる
制作時間を永延。に設定せず早描きでどんどん描き進めることが必要になる
描き進めればいいものもとそうでないものが揃うというわけだ
しかし何年にも渡り手を加えた作品は一朝一夕では出せない深みと層があるのも事実、絵具の厚みだけではないアーティストの執念という厚み、いや凄みも宿している
だから作品が尊さを増し説得力があり傑作と言われることに素直に納得するのだ
ただし最終的には作品の質で判断されるのではないだろうか
タブローにこれまで見たことのない新しい発見や発明があるかどうかが鍵となる
どんなに丁寧にどんなに時間をかけても新発見に至らずという場合は何かが足りていないのだ
とてつもない集中力で驚くほど速く描き上げることもまたアーティストとして求められる資質だということを作中で書いた小説『たゆたえども沈まず』は速く描き上げることがゴールではなく、速くて絵の内容に斬新さのある全く新しい作品であることがゴールだとしているのではないか
というのはやはりゴッホが主人公であるからだ
ゴールに至るまでの条件が増えれば増えるほど要求に応え得るだけの素質を持った稀有なアーティスト像が浮かび上がる
ゴッホが主人公の場合なら尚更だ
描くのが速く斬新さのある全く新しい作品
実際に描くのが速くて内容に斬新さのある全く新しい作品はうまれ得るだろうか
わたしは可能だと言いたい
人間には本人にも自覚しないようなあっと驚く底力が眠っている(とおもっている)
ここ一番というときに発揮する集中力と絶体絶命の緊張感からうまれる責任感は創造を爆発させる
(日本では火事場のバカヂカラと呼ばれる)
ゴッホはとんでもない集中力と速さで全く新しい斬新な作品を量産した
ゴッホは人間は高い集中力を持ってここぞという底力を発揮したらとんでもないことを起こせるという手本を見せてくれた
人間であるなら誰もが持ち合わせている能力であることを示した
それに挑むか挑まないか、後でするか今するか、はわたしたちひとりひとりの選択にかかっている
「作品にかける時間」を読んでくれてありがとうございます
自室を出ればビギナーである
絵を描く部屋から一歩外へ出ればわたしは取り立てて目立ったところのない特徴もない人間である
コミュニケーション下手のビギナーである
人と交流し社会を学び社会を知り、人々の感情を知り感覚を知り考えに耳を傾け、心理を理解する
他者に対してお先にどうぞと譲る精神を身に付けたいとおもっている
絵を描いている間は自分が保たれている
絵の外に出れば自分は無色になる
今日もおつかれさまでした
明日も素晴らしい日になりますように
ブログをいつも読んでくださりありがとうございます🎨
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