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白と青、白と黒:記憶と女性性、私のホームベース


MegumiKarasawa Blog.白と青、白と黒:記憶と女性性、私のホームベース
記憶と色。

女性性への問いと、創作の転換点


白と青白と黒。これらの色をキャンバスに落とし込む時、そこには常に女性の姿が立ち現れます。だからこそ、女性アーティストや女性作家の作品に強く惹かれるのは、私にとってごく自然なことでした。

しかし、不思議なことに、これまで「女性作家」という視点で作品を深く知ろうとしてきませんでした。そのため、現代アートが扱う主題のひとつである性差や偏見に関する問題提起についても、正直なところ、知識として知っているだけに留まっていたのです。

フェミニズムやジェンダーを含む性差や偏見に対する考えを、これまで自分事として捉えることはありませんでした。しかし、ある時、自分自身の制作テーマを深く掘り下げていく中で、この「女性」という視点が、私の内面に強く響くようになりました。


2024年まで、私は風景や建築物の構造、外部環境の骨組みをコラージュで作品にしてきました。断片的で曖昧な記憶をつぎはぎする黒色は、生命力を象徴していました。その一方で、記憶を呼び覚ます色として青色を選びました。当時、私は、自分に近い直接的な体験を元に絵を描きたいという強い衝動に突き動かされていたのです。

女性、人間、生命へ:新たな表現への挑戦


「女性とは何か?」

この漠然とした問いは、やがて「女性」「人間」「生命」へと繋がり、人間本来の姿、そして記憶していることを、キャンバスにドロリと落とし込みたいと思うようになりました。そこで、筆というオーソドックスな方法で描画に取り組むことにしたのです。


この新しいテーマに取り組み始めてから、まるで主題に引き寄せられるように、絵画に関係する様々なものたちが折に触れ目につくようになりました。それは、図書館で見つけた本だったり、書店で偶然手に取った本のタイトルだったり、その本の中にあった古い作品だったり、あるいはSNSニュースでふと目にした話題だったりします。

それまで無意識に避けていたものが、突然鮮明な意味を持ち始めたのです。


  • ハン・ガン(Han Kang 1970-)著 齋藤真理子訳『すべての、しろいものたちへ』河出書房新社,2023

  • 神林恒道 仲間裕子編『美術史をつくった女性たち』勁草書房,2003

  • ルシア・ベルリン(Lucia Brown Berlin 1936 - 2004)著 岸本佐知子訳『掃除婦のための手引書』講談社文庫,2022

  • イム・キョンソン著 熊木勉訳『リスボン日和 十歳の娘と十歳だった私が歩くやさしいまち』マガジンハウス発売 日之出出版,2024

  • エレナ・アルメイダ(Helena Almeida 1934-2018)《住みつかれた絵》1967

  • ハンナ・ヘッヒ(Hannah Höch 1889-1978)《母》

  • アネット・メサジェ(Annette Messager 1943-)《私の自由意志による罰》1972

色に宿る記憶と喪失のテーマ


白と青。白と黒。写真と日記。


キャンバスに選んだ色は、風景を描いていた時とは正反対でした。黒から白へ、それは記憶が失われていくさまを表しています。

2024年まで、私は作品を、潜在的な記憶を呼び覚ますものとして描いてきました。それは、他者の心に深く潜む個人的な記憶にコミットメントし、それを呼び起こすような体験をしてもらいたいという願いからでした。しかし、ある時、黒を基調とした表現から白色へと移行する中で、新たな気づきがありました。それは、記憶とは呼び覚まそうとしても決して掴みきれない、曖昧で、時には失われていくものとして存在するという真実です。

この発見が、私の視点を大きく変えたのです。


不可避な喪失と「ホームベース」への問い


生理的老化と病的記憶障害、あるいは健忘症的な喪失は、人間の自然な姿であり、抵抗できない、不可避的な状況です。私は、そのような状況に直面したとき、どのように生きるか、生きていこうとするのかを描きたいのだと思います。個人的な記憶を奪われたとき、人は自らのホームベースを失いかねません。


ホームベース。


風景を描く際には、発展と衰退という構造がありました。人間もまた、発展のピークと衰えがあります。この「衰え」はネガティブなイメージでしょうか?私はそうは思いません。不可避的な状況でのアクションと崩壊、もどかしさや諦念。それでも、為す術を見つけるように自然に抗う姿を描きたいのです。


靄がかかる前、霧がかかる寸前のアクションと崩壊の認識—この人間の本質的な姿を、私は今、絵画という表現を通じて深く掘り下げています。そして、絵画だけでなく、絵とは別の方法も視野に入れながら、このテーマを多角的に表現できないかと模索しているのです


7月15日(火)~20日(日)会場は粕壁市民センター2Fギャラリーグループ展に出品します。MegumiKarasawa
7月15日(火)~20日(日)会場は粕壁市民センター2Fギャラリー

【展示会詳細】

  • イベント名: 第9回 菜々燦会展

  • 会期: 2025年7月15日(火) - 20日(日)

  • 時間: 10:00 - 17:00 (初日13:00から、最終日16:00まで)

  • 会場: 柏壁市民センター2Fギャラリー(旧春日部市中央公民館)

  • 入場料: 無料

  • 参加作家: 石村 空也、唐澤恵、北村Q斉、高橋広、松本勝司

  • 特別イベント「似顔絵作成いたします!」: 7月15日(火)~20日(日)の10時~15時まで

    • 作家:高橋広(※17日(木)は高橋広氏がお休み)、唐澤恵(※全日在廊予定です)

    • 料金:一枚二千円(唐澤作品)

  • 会場アクセス:

    • 〒343-0061 春日部市柏壁6918番地1

    • 東武アーバンパークライン八木崎駅下車徒歩2分

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